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⑥ AI・データの利用に関する契約ガイドライン 1.1版(全体版)

2026年5月14日  2026年5月31日 

経済産業省「AI・データの利用に関する契約ガイドライン 1.1版」をわかりやすく徹底解説

AIやデータをビジネスで活用する際、契約の進め方や内容は意外とわかりにくく、どのように進めればよいか迷う場面が出てくることがあります。

特にデータは目に見えない無体物ですし、AIは学習データ次第で結果が変わる特殊な技術です。契約で揉めやすいポイントがたくさんあります。

ただ、実際のところ、AIサービスを日常的に利用し始めるとき、初めて契約書を意識するケースが多く、「これは自分事としてしっかり理解しておかないと…」と感じる人はまだ少ないのが実情です。

そんなときに頼りになるのが、経済産業省が発行した「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」です。

2019年12月発行の1.1版を中心に、データ編とAI編の全体像を、初心者の方にもわかりやすく整理してお伝えします。

このガイドラインを構えず読めるよう、難しい法律用語もできるだけかみ砕いて解説していきます。なぜこのガイドラインが重要なのか

データやAIの契約は、まだ前例が少なく「不完備契約」になりやすいのが特徴です。 曖昧なまま契約を結ぶと、後で「このデータ、第三者に渡していいの?」「派生した成果物の権利は誰?」といったトラブルが発生しやすくなります。従来のソフトウェア契約とは全く勝手が違います。

ガイドラインは、そんな取引コストを減らし、安心してデータ流通・AI活用を進められるよう作られた実務の手引きです。

ガイドブックの基本情報

タイトル:AI・データの利用に関する契約ガイドライン 1.1版(全体版)
発行元:経済産業省
発行日:令和元年(2019年)12月
バージョン:1.1版(初版:平成30年6月、1.1版:令和元年12月)
対象者:データ契約を締結・交渉する事業者(データ提供者・利用者・プラットフォーム事業者)、法務担当者、弁護士等の専門家
総ページ数: 362ページ
リンクURL:https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/connected_industries/sharing_and_utilization/20200619001.pdf

タイトル: AI・データの利用に関する契約ガイドライン(データ編)
バージョン:1.1版(令和元年12月改訂)
総ページ数:189ページ
リンクURL:https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/connected_industries/sharing_and_utilization/20200619002.pdf

タイトル: AI・データの利用に関する契約ガイドライン(AI編)
バージョン:1.0版 平成30年(2018年)6月初版
総ページ数:173ページ
リンクURL:https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/connected_industries/sharing_and_utilization/20200619002.pdf

ガイドラインの全体像

経産省はAI・データの利用に関する契約ガイドラインを以下の3点を同時に公開しています:

  • 全体版(362ページ):データ編+AI編を統合した完全版
  • データ編(189ページ):データ契約に特化
  • AI編(173ページ):AI開発・利用契約に特化

どれも無料でPDF公開されているので、ぜひ実際の資料も併せて読んでみてください。

3つの契約類型を理解しよう

ガイドラインの核となるのが、データ契約の3類型です。
契約類型どんなときに使うか特徴
提供型誰かが持っているデータを譲渡・ライセンス一方から他方へデータ提供
創出型IoTや複数企業で新しくデータを生み出す共同でデータを作る
共用型 (プラットフォーム型)複数社でプラットフォームにデータを集める参加者多数・ルール整備が重要

この3類型を軸に、それぞれの章で論点が整理されています。 自分の事業がどのパターンに当てはまるかをまず把握することで、検討すべき論点がグッと絞れます。 データ契約の3つの類型

1. 全体版のポイント

この全体版は、データ編とAI編をまとめた大本の資料です。

ガイドラインでは、データ契約を主に3つの類型に整理しています。一つ目はデータ提供型で、自分がすでに持っているデータを相手に提供する最も基本的な契約です。二つ目はデータ創出型で、IoTセンサーなどを使って複数企業が協力しながら新しくデータを生み出すケースを想定しています。そして三つ目はデータ共用型(プラットフォーム型)で、プラットフォームを通じて複数の事業者がデータを共有・活用する形態です。

第3章:法的基礎知識(ここが特に大事)

データは「所有権」の対象にならない無体物であるため、従来のモノの取引とは大きく異なります。そのため、主な保護手段は契約による取り決めと、不正競争防止法で定められた「限定提供データ」の保護になります。また、データを提供した側が十分な投資インセンティブを得られるよう、適正な対価や利益分配の考え方も丁寧に解説されています。

2. データ編の詳細

対象:契約担当者だけでなく、事業部門や経営層、システム開発者も

第4章 データ提供型契約

最もよく使われる契約形態です。 提供したデータから新しく生まれる派生データ(分析結果や加工データなど)の利用権限を誰が持つのかを明確に決めておくことが重要です。また、提供データの品質が期待に沿わない場合の責任の所在、目的外利用を防ぐルール、海外取引時のGDPR対応や準拠法・裁判管轄の決め方、個人情報が含まれる場合の個人情報保護法との関係など、実務でよく出てくる論点をしっかり整理しています。

第5章 データ創出型契約

IoTセンサーや複数当事者が協力して新しくデータを生み出すケースを対象としています。 対象データの範囲や粒度をどう設定するか、分析・加工後の派生データの利用権限、第三者への再提供制限、収益分配やコスト負担の方法、セキュリティ管理、契約終了後のデータ取扱いなどが主な検討事項です。特に消費者を巻き込む場合には、消費者契約法や独占禁止法、下請法への配慮も必要になります。

第6章 データ共用型(プラットフォーム型)

最も複雑な類型で、プラットフォーム事業者・データ提供者・利用者の三者関係を整理する必要があります。 データ活用の目的や範囲の設定、利用規約に盛り込むべき事項(保証責任、派生データの権利、監査、苦情処理、脱退時のルールなど)、プラットフォーム事業者の選定基準や責任範囲、国際競争を意識した視点まで幅広くカバーしています。

3. AI編のポイント

発行:2018年6月(初版) 対象:AIを開発・利用する企業の契約担当者、経営層、開発者

AI契約の難しさは、「成果物が契約時に明確に決められない」点にあります。 普通のソフトウェア開発とは根本的に違うため、専用の考え方が必要です。

AI開発の大きな特徴

AIの学習済みモデルは学習データに性能が大きく依存するため、契約を結ぶ時点で「この精度が出ます」と確約することが難しいという特性があります。また、ノウハウの重要性が高く、成果物を再利用したいニーズも強いのが特徴です。

おすすめの開発方式:「探索的段階型」

ガイドラインが特に推奨しているのが、探索的段階型開発です。この方式では、プロジェクトを以下の4段階に分けて進め、各段階の結果を見て「継続するか中止するか」を判断しながら進めることができます。

まずアセスメント段階ではAIの実現可能性を検証します。次にPoC段階で概念実証を行い、開発段階で本格的な学習済みモデルを作成し、最後の追加学習段階で納品後の精度向上を図ります。 従来のウォーターフォール型よりも柔軟で、AIの不確実性に適した進め方と言えます。また、契約類型としては請負型よりも準委任型(成果完成型または履行割合型)が親和性が高いと指摘しています。

特に大事な論点

学習データ、学習用データセット、学習済みモデル、AI生成物それぞれについて、権利の帰属や利用条件を明確に決めておく必要があります。また、損害が発生したときに「誰のデータが原因か」「プログラムの問題か」を区別して責任を分担する仕組みも重要です。さらに、再利用モデル(追加学習で生まれた新しいモデル)の取扱いや、独占禁止法・下請法に関する留意点も丁寧に解説されています。

AI開発の探索的段階型プロセス図

第7章:モデル契約書が超実用的

全体版・データ編・AI編のどれも、実際の契約書ひな形が収録されています。 データ提供型(ライセンス型・共同利用型)、データ創出型、そしてAI開発の各段階別契約(秘密保持契約、導入検証契約、ソフトウェア開発契約、追加学習契約)などです。

これらはそのままコピーして使うものではなく、中小企業でも扱いやすいシンプルな構成を心がけた「参考雛形」として位置づけられています。自社の状況に合わせて自由に修正・カスタマイズしてください。

別添も見逃せない

製造業、農業、医療、交通など、さまざまな産業分野でのデータ利活用事例が紹介されています。 また、作業部会で検討された具体的なユースケースと、そこから見えてくる契約上の論点もまとめられており、自社で契約を検討する際に非常に参考になります。


まとめと所感

経済産業省のこのガイドラインは、「データとAIの契約を体系的に理解したい」すべての人におすすめの一冊です。

特に嬉しいのは、難しい法律の話だけではなく、「実際にどう契約に落とし込めばいいか」まで丁寧に書かれている点。 初心者でも「なるほど、こう考えればいいのか」と整理しやすい構成になっています。

実務での活用Tips まずは自社がどの契約類型に当てはまるのかを明確にし、モデル契約書をベースに、自社特有のリスクや希望条件を追加で書き込むのがおすすめです。海外取引がある場合は、GDPR対応や準拠法の記載を必ず確認してください。

データやAIを活用する事業者にとって、このガイドラインは「安心して前に進むための地図」のような存在です。 ぜひ一度、目を通してみてください。


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