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⑬ 行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン(DS-920)

2026年5月14日  2026年6月1日 

政府の生成AIガイドライン「DS-920」を徹底解説

〜行政の進化と革新を安全に進めるための実践ルール〜

2025年5月27日、デジタル庁が「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン(DS-920)」を初版として公開しました。これは、政府が生成AIを本格的に業務に取り入れるための包括的な指針です。

生成AIの便利さを最大限に活かしつつ、リスクをしっかり管理する——そんな「攻めと守りのバランス」を具体的に示した資料になっています。国の職員だけでなく、生成AIを業務で活用しようと考えている民間企業の方にも参考になる内容です。

今回はこのガイドラインのポイントを、わかりやすく整理してお伝えします。

ガイドブックの基本情報

タイトル:行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン(DS-920)
発行元:デジタル庁(デジタル社会推進会議幹事会決定)
発行日:2025 年(令和7年)5 月
バージョン:初版
対象者:国の政府職員等
総ページ数:61ページ
リンクURL:https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e2a06143-ed29-4f1d-9c31-0f06fca67afc/80419aea/20250527_resources_standard_guidelines_guideline_01.pdf

ガイドラインが生まれた背景と目的

近年、G7広島プロセスをはじめ、国際的にAIガバナンスの議論が活発化しています。日本政府も「生成AIを積極的に活用したい。でもリスクはしっかり管理したい」というニーズに応えるため、このガイドラインを策定しました。

対象となるのは、主にテキスト生成AI(LLMを活用したシステム)です。画像生成AIやAIエージェントなどは、今後のバージョンで拡充される予定です。また、特定秘密や安全保障関連の機微情報を扱うシステムは対象外となっています。

令和8年度(2026年度)以降の新規調達からは全面適用され、令和7年度も可能な限り準拠するよう求められています。

生成AIを活用して業務を進める行政職員のイメージイラスト

政府が掲げる生成AI利活用の基本方針

政府は「リスクの低い業務から積極的に導入し、高リスクのものはしっかりチェックする」という現実的な方針を取っています。

特に重要なのが「高リスク判定シート」です。以下の4つの軸でリスクを評価します:

  • A. 利用者の範囲・種別:国民が直接使うのか、職員内部だけなのか
  • B. 業務の性格:国民の権利・安全・生命財産に関わる業務か
  • C. 機密情報・個人情報の扱い:学習させるデータに機密性が高い情報が含まれるか
  • D. 職員の判断介在:AIの出力結果をそのまま使うのか、職員が確認・判断するのか

この4軸で「高リスク」と判定された場合は、「先進的AI利活用アドバイザリーボード」に報告し、専門的な助言をもらう仕組みになっています。

実践的なポイント:日常の議事録まとめや資料作成のような低リスク業務は、スピード感を持って進められます。一方で、国民に直接影響する行政手続き関連は慎重に検討する——この線引きがとてもわかりやすいです。

政府全体のガバナンス体制

このガイドラインの大きな特徴は、明確な責任体制を構築している点です。

  • 各府省庁AI統括責任者(CAIO)を新設。デジタル統括責任者などが兼務し、生成AIのライフサイクル全体を管理します。
  • 政府全体:デジタル庁が事務局を務める先進的AI利活用アドバイザリーボードを設置。AIセーフティ・インスティテュート(AISI)も参画します。
  • 相談窓口:デジタル庁にAI相談窓口を設置し、各省庁が技術的な相談をしやすい環境を整備。

CAIOは四半期に一度程度、ボードに進捗を報告します。これにより、横串を刺した情報共有とリスク管理が可能になります。

生成AIガバナンス体制 デジタル庁とCAIOの関係図 

生成AIの便益とリスクを正しく理解する

便益の例

  • 文書作成・要約・翻訳の大幅効率化
  • 新しい政策アイデアのブレインストーミング支援
  • 問い合わせ対応の質とスピード向上
  • 政策文書の論理的整合性のチェック

一方でリスクも丁寧に整理されています。

技術的リスク:ハルシネーション(幻覚)、データ汚染攻撃、ブラックボックス問題 社会的リスク:個人情報漏洩、著作権侵害、誤情報拡散、ベンダーロックイン

政府特有のリスクとして「政治的中立性の逸脱」や「行政判断の根拠が不明瞭になること」も指摘されています。また単一モデル依存によるバイアス定着なども明示されています。これらは特に注意が必要なポイントです。

調達・利活用の具体的なルール

ここがこのガイドラインの最も実務的な部分です。

企画段階

  • 目的・目標の明確化
  • リスク分析
  • 高リスクの場合はアドバイザリーボードへの報告準備
生成AI高リスク判定4軸:利用者範囲・業務性格・情報機密性・判断介在

調達段階

調達チェックシート(別紙3)を活用し、仕様書に21項目の要件を盛り込みます。 主な基本項目には、AIガバナンス体制の構築、有害情報出力制御、偽・誤情報防止、説明可能性の確保などが含まれています。

契約チェックシート(別紙4)では、入力データの学習有無や、インシデント発生時の事業者対応義務なども明確に契約に記載します。

リリース前・リリース後

  • 徹底したテスト検証
  • 職員向け利活用ルールの周知
  • ログ取得体制の整備
  • 継続的なモニタリング

リスクケース(差別的出力、ハルシネーションによる不利益、著作権侵害など)が発生した場合は、CAIOを中心に迅速に対応し、知見を政府全体で共有します。

AI調達・利活用 ステップ別プロセス図

今後の展開

技術の進化は速いため、ガイドラインは随時見直される予定です。特に令和7年度中には、以下の検討が進められます:

  • 画像・動画生成AIへの来歴証明(ウォーターマークなど)の導入
  • 府省庁間のデータ連携と共通AIシステムのあり方

まとめと所感

DS-920は、ただのルール集ではなく「生成AIを安全に、かつ大胆に行政に活かすための実践マニュアル」と言えます。

特に印象的だったのは、リスクを「ゼロにしよう」とするのではなく「管理しながら最大限活用する」という現実的な姿勢です。CAIOという責任者の明確化や、チェックシートの具体性も非常に役立つはずです。

民間企業の方も、自社のAIガバナンスを考える際の参考にすると良いでしょう。「どこまでリスクを取るか」「誰が責任を持つか」を整理するきっかけになります。



他のガイドラインは以下よりご覧ください
AIガイドライン 18本 構造化インデックス
【一覧】日本政府 AIガイドライン 18本【INDEX】

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